カラーユニバーサルデザイン(CUD) 基礎知識編

アイリス通信 2016年4月5日号より抜粋 

2016/05/28 

 

 

 

 


the making of こころの色展Jr

 人の色の見え方にはいくつかの種類があります。でも、一人の人には一つの色の見え方しかありません。私たちは普段「他の人が自分と違う色の見え方をしているかもしれない」とは考えたりしないものです。色の見え方の違いの理解(色覚の多様性)が広がりにくい理由の一つです。

 でも、コンピューターの画像処理で色弱の人の色の見え方がわかるようになってから、色の見え方の違いは伝えやすくなりました。

 北海道CUDOでは、色弱の人の見え方のシミュレーション写真と、一般色覚者の見え方の写真を比較展示する「こころの色展」というイベントを行っています。色覚の多様性を知ってもらい、カラーユニバーサルデザインを普及するための活動です。一般向けの「こころの色展」はおかげさまで大成功を続け、まもなく10年目に入ります。

 この夏、石狩市のこども未来館から「いしかりこどもまつり」への出展のお誘いがあり、参加することになりました。

 北海道CUDO初のこども向けイベントです。名付けて「こころの色展Jr」。「初」ということは、お手本がありません。本番直前まで手探りの準備が続きました。一般向けと同じという訳にいかないことは十分想像できます。でも、具体的な方法がなかなか…。

 ここでは「こころの色展Jr」の試行錯誤の準備のあれこれを紹介します。


 

「こころの色展Jr」は2015年7月26日(日)石狩市こども未来館で行われました。報告文は北海道CUDOのブログにも掲載しています。

こちらも御覧ください。            北海道CUDOのブログ


the making of こころの色展Jr/色弱体験編

 色弱の人の見え方を疑似体験できるメガネがあります。バリアントールといい、メガネのように装着すると、色弱の人の見え方に近い状態になります。全ての色弱の人がバリアントールと同じ見え方をしている訳ではありませんが、色弱の人の見え方を感じることができます。
「こころの色展Jr」ではこのバリアントールが大活躍をしました。
こどもたちはバリアントールを掛けてみて「え?」と言い、思わず外してみます。いつもの見え方を確認すると、もう一度掛けて「えー!」とほとんどの子が声をあげます。
 その時、こどもたちが見ていたパネルが左の写真です。
「左右のパネルが同じ様に見える人がいるのよ」と説明しても、いまひとつピンとこない表情だった子が、バリアントールで見え方の違いの意味を実感した瞬間でした。どの子も目を丸くしていました。

 今回は、色弱の人の見え方のシミュレーションのパネルは、写真の1セットのみを展示しました。色の見え方の違いに意識を集中してもらうためです。食べ物などの写真のシミュレーションは物の印象の方が強いので使用しませんでした。
結果として「色に特化したパネル」+「バリアントール」が「色弱の体感」を導くことになりました。

 色弱の人の色の見え方を理解するには、年齢やそれまでの様々な体験が影響しますし、イメージする力も必要です。初めてバリアントールで見たときは驚きだけだったかもしれませんが、次にバリアントールを通して見たときは、新しい発見がきっとあると思います。


 ちなみにこのパネルは曲面の壁に自力で張り付いています。いえ、「自力」ではなく「磁力」です。壁がスチール製だったので、合わせ目近くのパネルの裏側に強力マグネットを貼り付けました。「ナイスなアイデア!」でしょ?


the making of こころの色展Jr/切り紙人形編

 「いしかりこどもまつり」に参加するにあたって、心掛けていたことがありました。それはお祭りの雰囲気を壊さないような展示にすること。
「こころの色展Jr」は、どちらかというと真面目な内容の展示です。
弾けそうな賑々しいブースやイベントがいっぱいの中で、重い内容なのに浮いてしまう可能性がありました。そこで、少しでも明るく楽しそうな飾り付けをしようと切り紙で連続人形を作りました。
切り出したのは男の子と女の子総勢約200人。(実際に飾ったのは100人分くらい)作るのに少し気力が要りました。
「みんな仲良く」がうまく表現できましたし「かわいい!」と好評でした。

 実はこの子たちには雰囲気作りだけではない別な任務がありました。
バリアントールを掛けて見ると「ピンクと水色」「黄色と黄緑」が同色に近く見える仕掛けです。使用した色上質紙は、色弱の人が見分けにくい「混同色」です。身近なコピー用紙に見分けにくい色があることを知ってもらう目的を兼ねていました。
文房具屋さんの店頭で、シミュレーションをしながら選び抜いた混同色の色上質紙は切り紙人形に変身して無事任務を終えました。
 この子たちには次の仕事のオファーもあり、身づくろいをして出番を待っています。


the making of こころの色展Jr/切り紙人形編Ⅱ

 「こころの色展Jr」の青空看板の右側は「だれもがうれしいカラーユニバーサルデザイン」と題したCUD事例の紹介コーナーです。
「商品タグに色名が書かれている」「充電器のランプが赤から黄色に変わった」「わかりやすい円グラフの書き方」など、「これもカラーユニバーサルデザイン?」と聞き返したくなるような日常のCUDを紹介しました。
その中に色上質紙の配布資料の例があります。「ピンクと水色」を使用した事例(左図)です。

 

 『プレゼンの配布資料には番号や記号をつけましょう。何色の紙でも番号や記号から探すことができます』


 ピンクと水色の切り紙人形たちをバリアントールで見た後は、思わず納得してしまう。という、もう一つの仕掛けです。ピンクと水色の切り紙人形チームは、なんと一人三役の働き者でした。

 


                               2015/08/09



こころの色展Jr/エピソード2

 

 少しドキドキしながらオープンした「こころの色展Jr」ですが、嬉しいエピソードを二つ紹介します。

 

 一つは…

 そろそろ閉展という頃、4年生くらいの男の子が「もう一度メガネを見せてください」(バリアントールでもう一度見たいの意)と言ってきました。2度目のご来展です。バリアントールを渡すと、メガネをかけて会場をじっくり眺め、「ありがとうございました」と丁寧にお礼を言って帰って行きました。何の説明もしませんでしたが、彼の中で何か思うところがあったように感じました。

「こころの色展Jr」が彼の心に響く何かになれたのなら、私たちはとっても嬉しい。

 

 もう一つは…
 当日は、おまつり会場をめぐるスタンプラリーが行われていて「こころの色展Jr」もスタンプポイントの一つになっていました。そのおかげで比較的地味な内容にもかかわらず、子どもたちが足を運んでくれました。

 おまつり終了後に知ったのですが、実はスタンプラリーの紙の裏側はアンケートになっていて「楽しかったコーナーは?」の問いがあったそうです。回収された100枚ほどの中に、子どもの字で「こころの色展」と記入した1枚があったと、こども未来館の伊藤さんから聞きました。

 「こころの色展Jr」がこどもたちに受け入れてもらえるか…と心配していましたが、こどもの心に楽しい何かを残せたとしたら嬉しいかぎりです。

たとえ一人であっても…。

 

                             20150812



カラーユニバーサルデザイン

色覚の多様性に配慮した社会

左側の写真と中央の写真が同じように見える人がいます。
右側の写真と中央の写真が同じように見える人もいます。
色弱と呼ばれる「色の見え方の多様性」の一つです。色弱の人の割合は、日本人男性の場合は20人に一人、女性は500人に一人といわれています。
これは病気ではありません。


色彩の中でも「赤」「緑」「茶」は色弱の人には弁別しにくい色です。
写真左は、赤の波長を受ける視細胞がないか特性が異なるタイプ(P型)のシミュレーション。
写真右は、緑の波長を受ける視細胞がないか特性が異なるタイプ(D型)のシミュレーションです。コンピュータの計算上の画像ですから、すべての色弱の方が同じように見えているわけではありませんが、ナナカマドの紅葉した箇所は見分けがつきにくいことがわかります。
葉っぱの形だから「きっと緑」、花の形だから「たぶん赤」、カサカサした葉っぱだから「茶色かな?」というように、「色ー形ー素材」を組み合わせて色弱の人は理解しています。

 

 人は生まれ持った色覚に疑問を感じることがありません。(基本的に…)

お隣にいる人も、前を歩いている人も、自分自身と同じように色を見ていると信じています。でも、実は色の見え方は一律ではないのです。

 同じ物の色が人によって違う色に見える(感じる)って、なんだか不思議な気持ちになるかもしれませんが、顔かたちや背の高さが違うように、血液型にいくつかタイプがあるように、「色覚」にもいくつものタイプがあります。

それを「色覚の多様性」と呼びます。私たちの社会はいろいろな色の見え方の人で構成された社会なのです。

 

                              

NPO法人北海道カラーユニバーサルデザイン機構では「色覚の多様性」について、様々な情報を提供しています。是非、ご覧ください。

 

北海道CUDO http://www.color.or.jp